
ヨガにおける正しい食べ方とは?

みなさんは毎日食べるものをどのようにチョイスしていますか?
おそらく、カロリーや栄養素、好みの味を重視して選んでいるのではないでしょうか?
ヨガの考え方では、食べ物のタイプ、そして質をより重視しています。好みの味に執着するのではなく、適量を適切なタイミングで食すことを大切にしています。
ヨーギー(ヨガを実践する人)は食べ物を選ぶときも、自分をコントロールしていくことが求められます。非常にシンプルなコンセプトですが、自由に食べ物が手に入る現代社会においては、実践するのは簡単ではありません。この記事ではヨガの食べ方・考え方をお伝えします。
こんな人におすすめ
- ヨガ哲学に基づいた適した食べ方、食べ物をチョイスできるようになりたい
- 心と体にとって良い食べ方をチョイスしたい
ハタ・ヨーガ・プラディーピカー におけるミタハーラ(節食)とは

ヨガと食事が何の関係があるの?と思うかもしれません。食事は私たちの心と身体に大きく影響します。食事(アーハーラ)は、ヨガにおける5つの基本原則の一つであり、ヨガの経典にもその詳細が詳しく述べられています。ハタヨガの経典「ハタ・ヨーガ・プラディーピカー 」にはミタハーラ(節食)、パテャ(適した食べ物)、アパテャ(適さない食べ物)についての記述があります。
[節食] バターと甘味をもっって味付けされた食べ物、胃の四分の一をあけておくこと、ただ生命への愛だけから食事をすること、これが節食と言われるものである。
ハタ・ヨーガ・プラディーピカー 1章58節, 佐保田鶴治(訳参照)
[食物についての禁忌] 辛いもの、酸っぱいもの、刺激性のもの、塩辛いもの、熱いもの、葉っぱ、ビンロージュの実、ごまの油、ごま、からし、酒、魚、羊肉等の獣肉、凝固した牛乳、水で割ったバターミルク、クラタ豆、ジュジュベの実、油で揚げた菓子、ヒングウ樹脂、ニンニク等は行者には不適切な食物と言われている。また、次のようなものは不健康な食べ物と心得るべきである。一旦冷えたものを温めた食物、油気がなくて乾いた食物、過度に塩辛いもの、酸味を帯びたもの、不消化なもの、野菜、ウトカタ等は避けるがよい。
ハタ・ヨーガ・プラディーピカー 1章59~60節, 佐保田鶴治(訳参照)
[ヨーガ行者に適する食物]ヨーギーにとって好適な食物は次の如くである。小麦、米、大麦、早稲米、優秀な穀物、生乳、バター、氷砂糖、新鮮なバター、白砂糖、蜜、ほししょうが、きうりなどの5種の野菜、豆類、清水等である。またヨーギーは栄養になる食物、甘味のあるもの、バター入りの食物、牛乳入りのもの、体力をつけるもの、その他自分の好む適当なものを食するのがよい。
ハタ・ヨーガ・プラディーピカー 1章62~63節, 佐保田鶴治(訳参照)
かなり具体的に書かれていますね。現代の私たちの食生活にそのまま取り入れるのは無理がありそうです。
しかし、重要なポイントは、ヨガにおいては、軽くて、消化に良いもの、そして、体力をつけてくれるもの、適切な量だけ食べるべきとあります。
ただ健康によい食物だけ選べばよい、というわけではありません。愛・感謝の気持ちを持って食べることをとても重要視しています。
バガヴァド・ギーターにおけるヨーガ食とトリグナ
トリグナ(Triguna)とは、心の性質 を3つのタイプに分けたものです。(トリ=3を意味します)

- サットヴァ(Sattva)ー純質
- ラジャス(Rajas)ー激質
- タマス(Tamas)ー惰質
トリグナ(心の質)の特徴
サットヴァ(純質):心身に調和をもたらし、平和で穏やか、愛情などの肯定的な心の質(食べ物:ミルク、ギー、完熟した甘い果物、できたての新鮮な食事)
ラジャス(激質):力や意志を与えるが、過ぎれば怒りや嫉妬、活動的になりすぎておせっかいになる(辛味、酸味、塩味のとりすぎ、刺激、熱性の強いもの、早食い、アルコール、カフェイン、チョコレート、発酵食品、ニンニク、玉ねぎ、ニラ)
タマス(惰質):不活発、怠惰、理性を鈍くさせ自己中心的になる(腐ったもの、残り物、古いもの、レトルト食品、冷凍食品、缶詰、不潔なものの食べ過ぎ、発酵食品、ニンニク、玉ねぎ、ニラ)
私たちのパーソナリティは、このトリグナの性質から構成されいると考えられています。どれか一つの性質だけを持つわけではなく、誰もが3つの性質全てを備えていて、中でも支配的なグナがその人のパーソナリティとして表に出てきやすい、と考えられます。
グナのコンセプトは古くはサーンキャ哲学に基づく経典「バガヴァッド・ギーター」にも記述されています。17章全てがトリグナを説明するために書かれています。重要なチャプターと言えますね。
[節食]節度を持って食べ、散策し、行為において節度を持って行動し、節度をもって睡眠し、目覚めている者に、苦を滅するヨーガが可能である。
バガヴァッド・ギーター6章17節, 上村勝彦(訳参照)
生命力、勇気、力、健康、幸福、喜びを増大させ、美味、油質で、持続性があり、心地よい食べ物は、純質的(サットヴァ)な者に好まれる。
過度に苦く、酸っぱく、塩辛く、口などを焼く、刺激性で、油気がなく、ひりひりし、苦痛と憂いと病気をもたらす食物は、激質的(ラジャス)な者に好まれる。
新鮮でなく、味を失い、悪臭あり、前日調理された、また食べ残しの、不浄の食物は暗質的(タマス)な者に好まれる。
バガヴァッド・ギーター17章8-10節, 上村勝彦(訳参照)
今のあなたの中ではどのグナが強いと思いますか?
バガヴァッド・ギーターの中で、トリグナの知識と理解は、ヨガの最終的なゴールであるモークシャ(本当の自由、幸せ)への道につながると、述べられています。
サットヴィックな食べ物を食べよう

さらにバガヴァッド・ギーターの中では、ヨーギーにとってサットヴィックな食べ物がベストだとしています。
具体的には、新鮮なドライフルーツ、生野菜、できたての野菜料理(豆、野菜、ギー、新鮮なミルク)など消化にやさしく胃に負担がかからないもの、エネルギーと活力を与えてくれる食べ物です。
私たちのメンタルは、食べるものによって大きく影響されます。「私たちの体は食べた物でできている」と言われるように食べ物のチョイスは私たちの心と身体のベースとなるものであり、人生をポジティブな方向に変えてくれるものです。
まとめ
- 感謝の気持ちでいただく
- よく噛んでゆっくり食べる・マインドフルネス(意識を向ける)
- 胃の1/4は空っぽにしておく(食べ物2/4, 水1/4)
- お腹が空いたら食べる
- サットヴィックな食べ物(季節、地域に適した新鮮な食べ物)をチョイスする
Yogiの一言

サットヴァ、ラジャス、タマス、この3つの食べ物のタイプからすると、私の好みは完全にタマスに偏っています。パン、チーズ、生ハム、ワインがあれば満足。今はお酒をやめて外食もほとんどしなくなっているので、若干タマス・レベルは下がっていますが・・・。

ヨーギーにふさわしいサットヴァ的食生活を心がけ、バランス良く食べたいと思います。
To achieve the goal of life, to find contentment and perfection requires a peaceful and focused mind. To control the mind is difficult since it is in reality very much under the control of our physical body. It is therefore suggested that we first discipline and control the physical body and the mind may be easily controlled. Diet plays and important part in this process.
人生の目標を達成するために、満足と完璧さを見つけるには、平和で集中した心が必要です。心は私たちの肉体のコントロール下にあるため、実際に心をコントロールすることは困難です。つまり私たちはまず最初に肉体を訓練してコントロールする必要があります。そうすることで、心を制御することができるのです。そのために食事は重要な役割を果たします。
Swami Vishnu Devananda