
はじめに
ヨガクラスの作り方は、クラスのスタイル、スクールの方針、インストラクターの個性によって様々です。
これが正しいという一つの答えがあるわけではありません。
私も、クラスをスタートさせたばかりの頃は、学校で学んだシークエンス をもとにテンプレート的なクラスづくりをしてきました。
回数を重ねるうちに生徒さんのレベルに合わせてシークエンス をカスタマイズ・修正する、ということを繰り返してきました。
ここでは、私自身がインストラクター養成学校で学んだ知識と地域のヨガクラスを立ち上げた経験をもとに、効果的だと考えるクラスの組み立て方をお伝えします。(指導歴4年目、理想のクラスづくりを実践中です。)
こんな人におすすめ
- ヨガインストラクターを目指している人
- ヨガインストラクター初心者・クラスづくりを学びたい人
- ヨガの指導をしていて、クラスづくりに迷っている人
クラスの目標設定(生徒さんがどうなりたいのか?)

ビジネスの考えにも共通しますが、お客様のどんな問題に解決策を提示できるのか。お客様にどんな価値が提供できるのか。
あなたはこの問いに対して明確な回答ができますか?
生徒さんは、あなたのヨガクラスに何を求めてきているのか?その期待に対してどういった価値を提供できるかのか?この目標設定を明確にする必要があります。
つい、自分の得意なポーズを中心にクラスを作りたくなってしまいますよね。けれど「生徒さん視点」を持つことがヨガクラスをデザインする上では欠かせません。
生徒さんが何を求めているのか?あくまで生徒さんを中心に考えることが重要です。(何か新規事業をやるときも一緒ですね。自社が売りたいものを売り込むのではありません。顧客が求めているものを見つけ出し、提供すること。顧客ファーストの考え方と通じるところがありますね。)
生徒さんの声を聞くこと。そして、クラスに来ることによって生徒さんがどうなりたいのかをまずは理解するところから始めましょう。 (ダイエットが目的なのか、柔軟性を高めたいのか、体力をつけたいのか、難しいポーズができるようになりたいのか、肩こりを直したいのか、リラックスしたいのか・・・)
大勢の生徒さんがいる場合は、全員の声を聞くのは難しいかもしれません。それでも、私は生徒さんの問題の解決策を提示できるようなクラスづくりを目指すべきだと思います。
そして、この目的をもとに、具体的なクラステーマを設定していきます。(例:肩こり解消のため、肩を開くポーズを多く取り入れる)そうすると、自然とクラステーマが絞られてきます。(股関節外旋、前屈、後屈、ツイスト、逆転、アームバランスなど)
レベルに応じたピーク ポーズの設定

目標がきまったら、次にピーク ポーズを設定します。このとき以下の5点を考慮して設定していきます。
- クラスのレベルを把握する(初心者と上級者が混在している場合、一番初心者にレベルを合わせるべきです)
- クラスの目標にあったピーク ポーズを解剖学的観点から選定する。
- ピーク ポーズが難しい場合にオプションとして提示できる軽減ポーズを検討する。
- ピーク ポーズに向けてクラスを組み立てていく場合、解剖学的観点から準備ポーズを選定する。
- ピーク ポーズの強度が高い場合、その刺激を中和するためのカウンターポーズを検討する。
クラスの中に必ずピーク ポーズを入れなければならないわけではありません。テーマが明確であれば、複数のポーズの流れが全体としてピーク ・ヴィンヤサとなることもあるでしょう。その点もクラスのレベルに応じて、ヴィンヤサ要素の多いクラスにするのか、ハタ的な進め方で一つ一つのポーズを丁寧に行うのかを検討します。
私の個人的な見解ですが、初心者の多いクラスではヴィンヤサより、アライメントを重視したアイアンガー 的なクラス作りが向いていると感じます。ヴィンヤサは体を動かしたい中級以上のクラスでは有効ですが、ポーズの入り方、ヴィンヤサの流れがわからない初心者の方がいる場合、全員が同じペースで動いていくことは難しいと思います。
時間配分

理想的な配分は、やはりクラスの目標や生徒さんの年齢層によっても異なってきます。標準的な考え方として、以下の割合を目安にできると思います。
<構成>
- オープニングトーク 10%
- プラーナヤーマ(呼吸観察) 10%
- アーサナ(ポーズの練習)70%
- ウォームアップ(準備ポーズを組み込む)
- ヴィンヤサ(太陽礼拝)
- 立位(準備ポーズを組み込む)
- ピーク ポーズ
- 座位(リラクゼーション)
- シャバーサナ 10%
シャバーサナは軽視されがちですが、アクティブなリラクゼーションの形として、短い時間であっても非常に高いリラックス効果が証明されています。とても重要なパートになりますので十分な時間を確保して、必要であればポーズの数を削りましょう。
デモの見せ方

インストラクターやスクールの方針によって意見が分かれるところかもしれません。
私の考えでは、理想的なクラスのにおいてインストラクターはデモをし続けるべきではないと考えます。
ポーズの入り方、出方をガイドしてお手本を見せてあげることは必要かもしれません。一方で、インストラクターの美しいポーズを見に生徒さんはクラスへ来ているわけではない、という点も理解する必要があります。
インストラクターはできるだけ生徒さんを観察することに時間をつかうべきです。生徒さんが、スムーズにポーズに入れているか、違和感・痛みを感じていないか、アジャストメントが必要かどうか。そして生徒さん自身が自分の体で感じながら、心地よいところ、安定したポーズを探していくお手伝いをするのです。
そして、ポーズの入り方を説明するときには必ず身体的なターゲットエリアを伝えましょう。このポーズに入ったら、どこに刺激を感じて欲しいのか。もし、ポーズが難しすぎる場合には必ず軽減法のポーズも提示してあげましょう。どのバリエーションが一番心地よいのかを自身で体感してもらうようにしましょう。
設備・環境

必要な道具や環境に関しては、クラスのコンセプト、スクールの環境によっても異なってきます。
その中でも、照明や生徒さん同士のスペースの取り方などインストラクターがコントロールできるところに関しては意識するようにしたいです。プロップスに関してはたとえ完備されていない環境であっても、手持ちのタオルや壁を利用するなど工夫をしてクラスづくりをすることが大切です。
- 必要なプロップス
- 音楽(あり、なし)
- 照明
- 温度設定
- 適切なスペースの確保
- コロナ感染対策(マクスや除菌シートなどの配慮)
- 体調が優れない生徒さんがいないか
ヨガマットを揃える場合は、Mandukaのマットがおすすめです。Mandukaのマットの重厚感、クオリティの高さ、安定感、手触りとクッション性。長く使えて環境にも優しい。目的によっていろんな厚み、材質のマットがあるので自分に合ったものを探せます。
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生徒さんとのダイアログ・PDCAをまわそう
生産技術における品質管理などで使われる手法として、 PDCAという概念があります。
Plan→ Do→ Check→ Actionの 4段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善する手法です。
小さなステップでよいので、まずは小さくスタートしてみることが大切です。
計画をたてて (Plan)、実際に行動にうつしてみること(Do)。そして、その結果どうだったのか確認する(Check)。そして改善を繰り返すこと(Action)によって、クラスづくりの精度を高めていくことができます。
いきなり最初から、完璧なクラスづくりをすることは無理があります。
毎回、浮かび上がってくる課題を受け入れた上で、改善をし続ける努力が重要です。そうやってクラス作りに取り組んだ経験こそが、よいクラスを作り上げると思います。よいクラスづくりは、インストラクターが一人でできるものではありません。常に生徒さんがいて、生徒さん自身が感じて、考えて、フィードバックを返してくれる。そのダイアログを通じて初めて双方向が一緒に作り上げた生きたクラスになるのです。
呼吸に意識を向けるとヨガが「動く瞑想」に。
ヨガの大きな特徴は、体だけではなく心にもアプローチしていけるところです。
必ず、呼吸を意識したインストラクションを心がけていきましょう。呼吸に意識を向けることで集中力が高まり、動く瞑想としてヨガの練習の質を高めていくこともできます。ヨガの最終的なゴールである瞑想へつながるよう、呼吸法や瞑想の練習も取り入れていきましょう。
今回の組み立て方をマインドマップにまとめました。ヨガクラスを初めて担当する方、今のヨガクラスの作り方を見直したい方の参考になれば幸いです。
私自身も、まだまだ勉強中の指導者です。生徒さんから学ぶつもりでクラスをデザインしています。
完璧なものなどどこにもないが、いつでも努力することはできる。そうすることによって生命が創造され何事にも興味が湧いてくるのだ。 <アイアンガー氏の言葉>