
私たちの思考の95%は昨日と同じ繰り返しだと言われています。無意識のうちに昨日、先週、先月、去年と同じ思考、同じ行動を繰り返していることはありませんか?私は、瞑想、ジャーナリングを習慣化し始めてから、そんな風に毎日同じような思考パターンにハマっている自分に少しづつ気づきはじめました。特にこの2年間はコロナの感染拡大の影響で、ずっとリモートワーク、家で過ごしていたので旅行などの大きなイベント・行事がなかったのも変化を感じづらかった要因かもしれません。このまま同じ思考を繰り返していては成長が止まってしまう!少し危機意識を持ちつつ、意識して自分の視点を変えたり、新しいことにチャレンジしたりする必要性を感じました。
この記事では、マインドセット・視点を変えたいときにぴったりの逆転ポーズ・シルシャーサナについて学びます。
こんな人におすすめ
- ヨガのヘッドスタンド(頭立ちのポーズ)の概要、効果、について知りたい
- モヤモヤした気持ちを晴らしたい・視点を変えてマインドチェンジしたい
- 同じ思考パターンから抜け出して、新ことにチャレンジしたい
ベルギーの王妃も練習していたヘッドスタンド
1958年ベルギーのエリザベス王妃が御年84歳の時、ヨガの教えを乞うためB.K.Sアイアンガー師を招きました。病弱で心臓に問題を抱えていそうな王妃をみて、アイアンガー師は簡単な立位のポーズから教え始めたそうです。
基本的なポーズだけにとどまらず、王妃は「ヘッドスタンド(サーランバ・シルシャーサナ )のポーズを教えて欲しい。私にヘッドスタンドを教えるのが怖いのなら次の列車でお帰りください」と粘ったそうです。
アインガー師は王妃の粘り強さに感謝し「あなたにヘッドスタンドをする勇気があるなら私にもあなたに教える勇気があります」と答えました。(出典:「アイアンガーヨガ完全マニュアル」)
王妃がそこまで粘って練習したかったヘッドスタンドとはどのようなポーズなのでしょうか?ヘッドスタンド(サーランバ・シルシャーサナ )はサンスクリット語で「支えのある頭立ちのポーズ」と訳され、ヨガ上級者向けのポーズです。
上腕と頭の3点で全身を支える代表的な逆転のポーズであり、アイアンガー師によると、ヨガの中で最も重要なアーサナの一つです。
心臓が頭より下に来る逆転のポーズでは、視点が変わることで心の変化を感じやすくなります。
ヨガスートラの中でパタンジャリは次のように述べています。
ネガティブな雰囲気の中にとどまったままでネガティブな想念を制御することはよほどの強さを持たない限り難しい。一番簡単なのは環境を変えることだ。それがプラティ・パクシャ・バーバナである
ヨガスートラ2章33節
つまり逆転のポーズをすることで、視点が変わり、ポジティブな視点を作り出す。ヨガ的に「逆転の発想」を作ることができるのです。
ヘッドスタンドの効果
それでは、ヘッドスタンドには具体的にどのような効果があるのでしょうか?
心臓より頭が下にくることで、脳細胞そして内分泌腺への血液への供給が増え、リンパと静脈の循環の向上、免疫系の強化に効果があるとされています。
アイアンガー師によるとヘッドスタンドの定期的な練習は、「精神的な領域を広め、思考の明確性を高める。集中力が高まり、記憶力が強化される」ということです。
代表的なヘッドスタンドの効果を下にまとめました。
身体的な効果
- スタミナをつける
- 肺活量の強化
- 血中のヘモグロビン含有量の増加
- 風邪、咳、扁桃炎の症状の緩和
精神的な効果
- 集中力アップ
- 記憶力アップ
- ポジティブ思考、逆転の発想
- ストレス(精神的疲労)低減
(出典:「アイアンガーヨガ完全マニュアル」より)
多くの効果が得られるヘッドスタンドのポーズですが、上級者向けのポーズとなりますので必ずインストラクター指導の元で実践してください。また高血圧、顎椎症、背中の痛み、頭痛、偏頭痛、月経中の場合は控えた方がよいポーズになります。
初心者から練習できる逆転のポーズはヘッドスタンド以外にもあり、たくさんの効果が期待できますので、できるポーズから取り組んでいきましょう。
初心者〜中級者向けの逆転ポーズ
ヘッドスタンドが難しい場合はまずはこちらの逆転ポーズから練習してみましょう。
- 下向きの犬のポーズ(アド・ムカ・シュヴァナーサナ)
- 立位の開脚前屈のポーズ(プラサリータ・パドッタナーサナ)
- 鋤のポーズ(ハラーサナ)
- 肩立ちのポーズ(サーランヴァ・サルヴァンガーサナ)
毎朝のヘッドスタンドは究極のマインドフルネス瞑想

ヘッドスタンドのポーズはマインドフルネス瞑想の準備になります。
なぜなら、ヘッドスタンドで逆さまになった状態ではいつものような思考がしにくくなり、自分の心の癖や思考パターンに囚われず、自分の心の変化が感じやすいからです。
アシュタンガヨガのプライマリーシリーズの最後のパートにはヘッドスタンドが組み込まれているので、私は毎日ヘッドスタンドで視点を変える、気分を変えるプラクティスを習慣化しています。
今日は寝坊したな、今日はだるいな、気分がのらないなと思う日でもヘッドスタンドをすることで気分がさーっと入れ替わります。なぜか分からないのですが、めんどくさいという気持ちが消えて頭がクリアになる感覚を得ることができるのです。
ヘッドスタンドのポーズをキープするためには自分の呼吸、背骨をまっすぐ伸ばして軸を感じ、バランスをとるために全身に意識を向ける必要があります。この呼吸に深く集中するという作業は、瞑想の準備となるだけでなく、マインドフル瞑想そのものだと言えるのではないでしょうか。
ヨガの素晴らしさは、年齢、性別、身体のコンディションに関係なく誰にでも実践できるところです。そしてなにより身体をバランスよく使うことで身体と心の両方をリラックスさせることができます。ジョギングや筋トレなどのハードな肉体運動では、どちらかというと肉体を酷使するため疲労感が残ります。ヨガは、体を気持ちよく動かす事ができ、リフレッシュできるので習慣化しやすいのです。「今日も〜しなければいけない」という義務感ではなく、「気持ちいいから毎日ヨガをしたい」ポジティブな気持ちで継続しやすいので、運動がなかなか続かない・・・そんな人にもおすすめです。
逆転のポーズで、「逆転の発想」新しい視点を取り入れましょう。
逆転のアーサナは身体の不純物を取り除き、強さ、平静さ、そして心の明快さをもたらす
B.K.Sアイアンガー
シルシャーサナができるようになるまでのYogiの軌跡
「倒れるのが怖い」私の場合は、怖すぎてずっと壁を使って練習していました。反対側に倒れても、壁があれば足をつくことができます。少しづつ壁から距離をとりながら、片足づつ足を壁から離す練習の繰り返し。気がつくと、壁に頼ることなく、自分でバランスを取れるようになってきました。
私たちは誰に習ったわけではないけれど、2本足でバランス良く立つことができます。前や後ろに倒れたりしません。
同じように、一度頭と腕で真っ直ぐに立つ感覚を覚えてしまえば、安定してポーズを長くキープ(数分〜)することも可能です。
ぐらついたり、前や後ろに倒れてしまうのは、恐怖心から心が揺れてしまうのが一番の原因。そして恐怖心を乗り越えるための一番良い方法は、一度反対側に倒れてみることかもしれません。お布団を反対側にたくさん敷いて、倒れるつもりでトライしてみると、案外倒れることは大したことない、そんな風に思います。集中して、背骨をまっすぐ伸ばして軸を感じることができれば快適な状態で安定してポーズをキープできます。とても集中力のいる作業なので、このポーズをとっている時は、完全にフォーカスしています。余計な雑念や、モヤモヤな思考もありません。
Yogiの練習ステップ(ポーズが安定するまで1年くらいかかりました)
- Step1:パピードッグ→ダウンドッグ→ドルフィンポーズ
- Step2: 壁を使った練習。(壁の近く→壁から少しづつ距離を離して)片足づつ、足を壁から離す練習。壁なしでもバランスが取れるようになったら次のステップへ
- Step3: マットの上で練習。まずは膝を曲げた状態で腰を立たせてバランスをとる練習をひたすら続ける。(しっかりと両腕でマットを押す)
- Step4: 足を上げる。最初はまっすぐ足が上がらず、グラグラしている状態。安定してキープできるまで体感しながらまっすぐの感覚をつかむ。
今ではグラつかずにまっすぐ安定してポーズをキープできるようになりました。しっかり腕+背中(肩甲骨)を使ってあげれば、首に負担がかかりにくいです。長い道のりですが、一度逆転のポーズを覚えてしまうと、本当に短時間で気持ちの入れ替えができます。

初めての方はまずは指導者の元で学んでいただき、時間をかけてマスターしましょう。しっかりステップを踏んで練習すれば誰にでもできるようになるポーズです!(私たちが二本足で立てるのと同じように!)