
ヨガのアーサナ(ポーズ)と違い、ムドラーは、いつでもどこでも実践することができます。
座っている時、立っている時、歩いている時。手軽に実践することができる反面、その効果はアーサナやプラーナーヤーマ(呼吸法)と比べると効果を感じづらいという側面があります。あまり知られていないムドラーですが、体内のエネルギーをコントロールし、気の流れを良くしていくものと考えられています。
毎日のプラクティスに取り入れて、時間をかけて、少しづつその効果を体感してみましょう。
こんな人におすすめ
- ムドラーについて知りたい人
- ムドラーをヨガのプラクティスに取り入れたい人
- プラーナーヤーマ、瞑想のプラクティスの質を高めたい人
ムドラーとは
サンスクリット語のMudraには、「ロックする」「封印する」という意味があります。
ムドラーは手や顔、体を使ったジェスチャーのことです。心身のバランスを整え、精神的な覚醒を促してくれるものです。
経典には、ムドラーは私たちに「喜びをもたらすもの」として定義されています。
[ムドラー]この法は十分に注意して秘しておかなければならない。なんびとにも分かち与えてはならない。この法こそは、ヨーギーたちに幸福をもたらすものである。この法は、マルト(風の神々)のような下級の神々では入手できないのである。
ゲーランダ・サンヒター 3章5節 訳)佐保田鶴治
[ムドラー]それ故に、梵への道(スシュムナー)の入り口に眠っている女神(クンダリニー)を何とかして目覚めさせるために、行者は各種のムドラーの修練を積まねばならない。
ハタ・ヨーガ・プラディーピカー 3章5節 訳)佐保田鶴治

ゲーランダとプラディピカー、どちらも同じ3章5節。おもしろい偶然です・・・
ムドラーの種類

一言にムドラーと言っても、さまざまな種類があります。ヨガの経典ゲーランダサンヒターでは、21種類ものムドラーが記述されています。
ムドラーは、使う体の部位によって、大きく5つの種類に分けられます。
- ハスタ・ムドラー(手印、手)
- マーナ・ムドラー(頭部)
- カーヤ・ムドラー(身体、アーサナ)
- アーダーラ・ムドラー(会陰部)
- バンダ・ムドラー(喉、お腹、肛門)
ヨガクラスでよく使われる「バンダ」もムドラーの一つの種類です。バンダとは、絞めると言う意味を持ち、エネルギーを外に漏らさないようにするためのエネルギーロックのようなものです。バンダは特にプラーナーヤーマの練習において非常に重要なテクニックです。
- ムーラ・バンダ (骨盤底筋の引き締め)
- ウディヤナ・バンダ (腹部の引き締め)・・・例)ナウリ呼吸法
- ジャランダラ・バンダ(喉のロック)・・・例)サーランヴァ・サルワーンガアサナ(肩立ちのポーズ)
この記事では、最も実践しやすい入門編のムドラーとしてハスタ・ムドラーについて詳しく見ていきます。
ハスタ・ムドラー(手印)

私たちの肉体は、5つの元素(地・水・火・風・空)から構成されると考えられています。そして、ハスタ・ムドラー(手のムドラー)においては、5本の指がそれぞれ五大元素、チャクラと関係していると考えます。この5つの要素のバランスが崩れると、私たちの免疫システムに影響し、病気を引き起こします。ハスタ・ムドラーは、この五大元素を活性化させ、バランスを整えていくテクニックです。
プラーナーヤーマ・瞑想のプラクティスで使えるハスタ・ムドラー
ナディショーダナ(片鼻呼吸法)
片鼻呼吸法を実践するのに大きく2つのムドラー(手の形)があります。一つはShanka Mudra シャンカ・ムドラーや Vishunu Mudra ヴィシュヌ・ムドラーと呼ばれる人差し指と中指を折り曲げるやり方。もう一つは、薬指と小指を折り曲げて、人差し指と中指を額の真ん中(第3の目)にあてる方法があります。
伝統的には、ムドラーを組むのは右手とされています。(インドでは、左手は不浄とされるため)


片鼻呼吸法については、こちらの記事を参照ください。
チン・ムドラー (ギアナ・ムドラー)
瞑想の時に使う、ムドラーとして有名なものに、チン・ムドラーがあります。親指の先と人差し指の先をくっつけて、残りの3本の指はくっつけたまま真っ直ぐに伸ばします。手の平の向きによってチン・ムドラーと呼んだり、ジュニャーナ・ムドラーと呼ぶ場合もありますが、ここでは簡略化するため、親指と人差し指を合わせる手印をチン・ムドラーとします。
メンタルバランスが整い、幸福感を感じやすくなります。知性が発達し、記憶力、集中力を高めてくれる知識のムドラーとも呼ばれています。

Yogiの一言
私たちの体には、7万以上ものナディ(気・エネルギーの通り道)があるそうです。そして指先には特に多くのナディが集まっています。ハスタ・ムドラーを組むと、指先にまでエネルギーが感じられると思います。
どうしても違いを感じづらい・・・という方は、チンムドラーを組んで、手のひらを上に向けてみてください。より胸に呼吸が通りやすくなるのを感じます。逆に、手のひらを下に向けてチンムドラーを組んでみましょう。より下向きのエネルギーを感じると思います。腹式呼吸が意識されやすくなります。

実際に自分の体で体験して、指先に感じる微細なエネルギーの変化を感じてみましょう。
ムドラーについてより詳しく知りたい方は、以下の本がおすすめです。パラパラめくって眺めるだけでも面白いです!
