
片鼻呼吸法(ナディショーダナ)は左右の鼻で交互に行う呼吸法。陰と陽のエネルギーバランスを整えてくれる、ヨガのプラーナヤーマ(呼吸法)の中でも最も重要とされるテクニックの一つです。
私たちの日常の呼吸は片方の鼻で行われており、自律神経の働きで無意識のうちに1〜2時間おきに左右が入れ替わっているそうです。左右どちらの鼻が支配しているかで、右脳と左脳、どちらの脳が活発になっているかということにも関係しています。右脳は、直感的なことや、感覚的なことを司り、左脳は論理的で推論的な役割を担っています。また、呼吸する鼻によって優勢となる神経も変わってきます。右側の鼻で呼吸しているときは交感神経、左側の鼻で呼吸しているときは副交感神経。
この左右を調和させることでプラーナ(気の流れ)のバランスをとり集中力を高めてくれます。片鼻呼吸法(ナディショーダナ)のプラクティスは、瞑想への準備としても非常に効果的です。この記事では、毎日5分取り組むだけで、集中力が高まるヨガの呼吸法をお伝えします。

こんな人におすすめ
- 体と心のバランスを整えて、睡眠の質を高めたい
- メンタル面を使う仕事をしていて、マインドをリラックスさせたい
- 呼吸法を日常の習慣に取り入れて、集中力を高めたい
- ヨガのアーサナ・呼吸法・瞑想のプラクティスの質を高めたい
ヨガにおける浄化法(クリヤ)としての片鼻呼吸法(ナディショーダナ)- Nadi Shodhana
「Nadi」という言葉は「経路」またはエネルギーの「流れ」、そして「Shodhana」は「浄化」を意味します。そのためNadi Shodhana ナディショーダナは「経路の浄化」を意味すると言われています。ナディショーダナ(片鼻呼吸法)は左右交互の鼻呼吸で、左の鼻、右の鼻を交互に塞ぎながら片鼻ずつ呼吸する呼吸法です。
ヨガにおいては、大きく2つのタイプの片鼻呼吸法があります。クンバカ(止息)なしのバージョンと、クンバカ(止息)を入れたバージョン。そしてヨガの経典によると、必ずクンバカなしのナディショーダナをマスターしてからクンバカ(止息)のプラクティスを行うことが推奨されています。クンバカ(止息)なしの浄化法(クリヤ)としてのNadi Shuddhiについては、Vasishta Samhitaという経典で記述されていて、ヨガにおいては最も基本的で重要な呼吸法の一つとされています。(この記事では、簡易的にNadi Shodhanaという名称に統一して表現しています)
なぜ、「Nadi- 経路の浄化」がそれほど重要なのでしょうか?ヨガの経典によるとナディの浄化無くしては、プラーナ(エネルギーの流れ)のコントロールはできない、そしてNadiの浄化は呼吸法の練習の前に行う必要があります。ナディが浄化されることで、プラーナ(エネルギーの流れ)のバランスをととのえ、瞑想状態に入りやすくなると考えられています。ナディショーダナ(片鼻呼吸法)は左右交互に鼻呼吸を行うことでエネルギーの流れを浄化する呼吸法と言うことができます。精神的なセンタリングを創り出したい時にもおすすめの呼吸法です。
左右・対極となる二極:
左の鼻
- 右脳(直感的思考・記憶力・想像力・ひらめき)
- 副交感神経(リラックス・落ち着き)
- 陰
- イダ(月のエネルギー)
右の鼻
- 左脳(論理的思考・言語・計算力)
- 交感神経(活発さ、緊張、興奮)
- 陽
- ピンガラ(太陽のエネルギー)
片鼻呼吸法(ナディショーダーナ)を生活に取り入れるメリット・効果
ハタ・ヨガでは、多くの体の問題はイダとピンガラのナディ、左右のバランスが乱れることで起きていると考えられています。片鼻呼吸法で左右のバランスを整えることで、身体的、精神的な効果だけではなく、陰陽のエネルギーバランスを整えることにつながります。
- マインドをリラックスさせ集中力を高める
- 右脳と左脳の働きのバランスをとる
- 陰陽のエネルギーバランスを整える
- インナーマッスルを刺激する(横隔膜を上下に動かすことで基礎代謝を高める)
- 睡眠の質を高める
- 呼吸の質を高め、頭痛、鼻のトラブルを改善する
どちらかの鼻が詰まっている場合は、始める前にジャラ・ネティ(鼻洗浄)がおすすめ
片鼻呼吸法の練習をはじめる時、どちらかの鼻が詰まっているケースが多くあります。そんな時にオススメなのがジャラ・ネティ(鼻洗浄)です。私は朝と夜寝る前にジャラ・ネティを行っていますが、呼吸法の練習が非常にやりやすくなるだけでなく、鼻がすっきりするので、睡眠の質も上がったように感じます。私は、ドラッグストアで購入できる鼻洗浄用のプラスチックのボトルで行っています。
ヨガスクールなどでオススメされている陶器のネティ・ポットの方が、煮沸消毒して使えるので衛生的には長持ちする、と聞きました。(見た目もそちらの方がオシャレ・・・)私の場合は、簡易的なプラスチック製のほうがやりやすいため、毎日継続しやすいプラスチックの方をチョイスしています。鼻洗浄のやり方は、最初は難しく感じますが、続けているうちに「やらないと気持ち悪い」くらいとてもすっきりします。特に鼻詰まり、花粉症に悩んでいる方にもオススメです!
ナディショーダナ(片鼻呼吸法)のやり方
座り方
無理のないまっすぐな姿勢で座ります。ヨガが初めての方は安楽座(スカーサナ)がオススメです。ヨガの座位ポーズの種類についてはこちらの記事を参照してください。
特に骨盤を立たせて、背骨・首・頭をまっすぐにして安定した座法で座ることが大切です。
ムドラー(手の形)の組み方
交互の鼻を開けたり閉めたりするのに、手の指を使います。ナディショーダナ(片鼻呼吸法)を実践するのに大きく2つのムドラー(手の形)があります。伝統的には、Shanka Mudraと呼ばれる人差し指と中指を折り曲げるムドラーがあり、もう一つのやり方としては、薬指と小指を折り曲げて、人差し指と中指を額の真ん中(第3の目)にあてる方法があります。どちらでもやり易い方をチョイスしましょう。
伝統的には、ムドラーを組むのは右手とされています。(インドでは、左手は不浄とされるため)


呼吸法のやり方(必ず左からスタート)
この呼吸法では、必ず左の鼻(イダ)の吸う息からスタートし、左の鼻から吐く息で終わります。経典によると左の鼻から呼吸を行うことでアムリタ(甘露)を作り出し、右の鼻から行うと、熱と毒を生み出すとも考えられていたようです。
- 安定した座法で座る
- ムドラー(手の形)を組み、親指で右の鼻孔をおさえる。
- 左の鼻からゆっくりと吸います
- 吸い切ったら親指を離し、薬指で左側の鼻孔を閉じます。
- 右の鼻からゆっくりと息を吐きます。
- 吐き切ったら、右の鼻から吸います。
- 吸い切ったら、薬指を離し、親指で右の鼻腔を押さえます。
- 左の鼻からゆっくりと息を吐きます。(ここまでで1ラウンド)
最初のうちは、吸う息と吐く息1:1の長さからスタートしましょう。自分が心地よいと思える長さでホールドします。吸う息4秒、吐く息4秒くらいからスタートし、慣れてきたら徐々に20秒〜くらいまで伸ばして、吐くいきを長くしていきます(1:2)。一番大切なのは、自分が心地よいと思える長さで行うことです。決して無理はしないようにしましょう。(無理にカウント・クンバカ(止息)しなくても良い)
毎日5分・呼吸法のプラクティス

ナディショーダナ(片鼻呼吸法)はいつ、どのくらい回数やればいいのでしょうか?
ヨガの経典によると、1日18ラウンド(6ラウンドを1日3回)を3−4ヶ月継続することでナディが浄化されるとされています。Vasishta Sanhita 2章67節
個人差はありますが、最初のうちは6ラウンド行うのに5分もかかりません。1日3回15分を目安にナディショーダナ(片鼻呼吸法)を実践してみましょう。ヨガの練習後や瞑想の前に行うことが良いとされています。私は朝起きた後、夜寝る前に行っています。リラックス効果もあるので、睡眠の質を高めてくれている気がします。
呼吸法はヨガのアーサナ(ポーズ)と一緒に練習することで瞑想への準備となる

ヨガの最も知られている経典にヨガ・スートラがあります。パタンジャリ先生は、ヨガのゴールに至るための8段階のステップ(八支則)について述べています。
- Yama(ヤマ)・・・5つの禁戒(道徳規範)
- Niyama(ニヤマ)・・・5つの歓戒(生活規範)
- Asana(アサナ)・・・アーサナ(ぽーず)
- Pranayama(プラーナヤーマ)・・・呼吸法
- Pratyahara(プラッティヤーハーラ)・・・感覚の制御
- Dharana(ダーラナー)・・・集中
- Dhyana(ディヤーナン)・・・瞑想
- Samadhi(サマーディ)・・・三昧
アーサナの練習無くして呼吸法をマスターすることはできない、そして呼吸法の練習なしに瞑想に至ることはできない。
身体的な効果、メンタルの効果だけを目的にするのであればアーサナや呼吸法だけでも良い。古典的なヨガのゴールである瞑想を実践するためには、アーサナ(ポーズ)と一緒に呼吸法を練習する必要があるとされています。そして呼吸法をマスターするためには、まずはナディの浄化が必要。ナディショーダナ(片鼻呼吸法)はヨガを本格的に実践していく上で、最も基本的で欠かすことの出来ないプラクティスだと言えそうです。
まとめ
- 私たちの日常の鼻呼吸は左右どちらか片方で行われている。ナディショーダナ(片鼻呼吸法)を行うことで、左右、左脳・右脳、陰・陽、副交感神経・交感神経のバランスを整えることができる。
- ナディショーダナ(片鼻呼吸法)の効果は、身体的効果だけではなく、精神的、エネルギーバランスを整えることにつながる。リラックス効果、集中力を高める効果が期待できる。
- Shanka Mudraと呼ばれるムドラー(手の形)で、左右の鼻を交互におさえる。
- 必ず、左の鼻から吸う息でスタートし、左の鼻から吐く息で終わる。
- 呼吸の長さ・クンバカ(止息)は気にしなくて良い。無理にカウントする必要はなく、心地よい長さで呼吸する。最初は吸う息4秒、吐く息4秒くらいからスタート。
- 1日3回 x 6 ラウンドを継続することで3−4ヶ月でナディが浄化される
- 1日が始まる朝、ヨガのアーサナ練習後、瞑想の前に行うのがおすすめ。
Yogiの一言・片鼻式呼吸法はメンタリストDaigoさんもおすすめする呼吸法
メンタリストDaigoさんの動画では、ヨガの片鼻式呼吸法を行うことで英語学習が捗るという研究結果が紹介されていました。
イスタンブールメディポール大学の研究によると、片鼻式呼吸法を1日5分〜10分、7週間続けることによって英語(リスニングとリーディング)の成績がアップすることが示されたそうです。
呼吸法の練習は、ヨガのアーサナ(ポーズ)の練習と違ってなかなか目に見える効果をすぐに感じにくいです。アーサナの練習は、目で見え、身体的な効果も感じやすい反面、呼吸法や瞑想のプラクティスは、より繊細な体や心の感覚に意識を向けていく必要があります。ヨガの最終的なゴール(心の動きをコントロールする)を考えるならば、アーサナ・呼吸法・瞑想を組み合わせて練習することが重要です。そうすることでプラクティスの質も上がります。まずは毎日の心地よい習慣として、まずはナディショーダナ(片鼻呼吸法)から初めてみましょう!